テレビもインターネットもない時代、書店は人々の文化的な生活を支える拠点であり、
情報が流通する重要な結節点だった。
植民地書店経営者当人の証言であり、戦前の台湾、ひいては外地における書物文化を考える上で、他で目にすることのできない情報を入手しうる第一級の一次資料である。
村﨑長昶 (むらさき ながあき、1870‐1950年)
熊本県不知火村生まれ。1885年中学済々黌入学、91年沖縄にわたり『琉球踊狂言』、『琉球風俗記』の二書を著述。1898年台湾で新高堂を開業、最初文房具、その後、書籍販売、運動器具、楽器、出版とその取扱い品を増やす。1905年日露戦争の際、雑誌・書籍とも売上げを大いに伸ばす。21年の台湾書籍商組合結成以来敗戦まで組合長。その間、台湾書籍、台湾出版などの主要株主、台湾製紙、台湾出版会などの理事、台北市会議員。46年大分県に引揚げ。
【全一巻】本書収録資料
村﨑長昶『記憶をたどって 八十年の回顧録』(西田書店、1983 年6 月)
〈附録〉台湾書店・読書関係資料
一、甕港生「台北の本屋さんに物申さん」(『台湾警察時報』302 号、1941 年1 月)
翻刻資料
二、「本屋の五分間」(『台湾日日新報』1904 年4 月10 日)
三、「台北の愛読雑誌」(『台湾日日新報』1909 年6 月24 日)
四、「新刊雑誌の読者」(『台湾日日新報』1917 年2 月5 日)
五、「台湾の読書会―新刊雑誌の驚く可き激増/殊に婦人幼年物の大激増」
(『台湾日日新報』1917 年2 月27 日)
六、「欲も得もなかった」(『台湾日日新報』1918 年5 月1 日)
七、「文武街(新高堂より総督府新庁舎を望む)」〔図版〕(『台湾日日新報』1918 年5 月12 日)
八、「書籍商組合の解剖」(『台湾日日新報』1922 年3 月9 日)
*総目次細目
著 者―村﨑長昶
編・解題―日比嘉高
造 本―A5判・上製函 総248頁
揃 価―16,800円
刊 記―2020年1月 ISBN978-4-909680-62-4